レインボープラン in 山形県長井市
 「レインボープラン」という素晴らしい地産地消の取り組みを行っている所が山形県にあると聞き、1泊2日で見て来ました。実際に、市役所やボランティアの方の案内による堆肥化施設の見学だけでなく、レインボープランで作られた堆肥を使って野菜をつくっている農家の方や、レインボープラン実現に多大な貢献をしたリーダーの方、さらにはごみステーションにごみを捨てに来た主婦の方々も捕まえてレインボープランについていろいろとお話を伺うことができました。その一端をここで紹介します。
レインボープランとは・・・
 レインボープランとは、家庭から出る生ごみを分別収集し、市内にある堆肥化センターで堆肥化させ、できた堆肥を市内の農家に使ってもらって農産物をつくり、さらに、その堆肥ででき上がった農産物を「レインボープラン農産物」として認定し、市内各所で販売するという地産地消の取り組みです。もともとは街づくりを考える中から生まれてきたアイデアで、平成9年からスタートし、今では先進的な取り組みとして全国各地から多くの人たちが視察に訪れています。
分別
 家庭から出る残飯類のみをきれいに分別。骨や貝殻はもとより、防腐剤で腐りにくくなっている果物の皮類なども取り除きます。また、塩分の強いものもできるだけ入れないようにしています。この分別を徹底するまでに何百回もの説明会を開いたそうです。その中で大きな力になったのが、婦人会などの女性団体だったそうです。今では、父親が間違って生ごみにタバコを入れるとタバコ臭い野菜ができると怒る子供たちもいるほど意識が根付いているそうです。
収集
 長井市全9,600世帯のうち、市街化の進んだ中央地区約5,000世帯を対象に週2回収集されています。収集方法は各家庭からバケツ等で生ごみをステーションに持ち出して専用のバケツに投入し、そのバケツごとトラックで収集していくというやり方です。当初、収集方法が検討された時に、バケツだと中身が見えてしまいプライヴァシーの侵害になるという意見もあったようですが、逆に中身が見えた方が監視の目が行き届き分別が徹底されることからバケツ方式になったそうです。専用のバケツを設置するステーションも市民がお金を出し合い設けたそうです。
堆肥化
 生ごみを堆肥化するためのコンポストセンターが作られる時に、地元から反対の声もあったようですが、地域対策をしっかりと行うことを条件に建設されたそうです。また、「迷惑施設ではないので、多くの人たちに見てもらいたい」との思いから、山奥ではなく、人里に近いところに設けられたそうです。ちなみに建設費に約4億円、付帯整備に2億3000万円ほどかかったそうです。
 レインボープランを始める前に農家に対して堆肥についてのアンケート調査を行ったそうです。それでも、最初の頃は堆肥の未熟さに対する心配から、農家からの及第点は取れなかったそうですが、今では堆肥が足らないほど多くの農家に使われています。ただ成功例ばかりでなく、中にはレインボー堆肥を使って失敗した例もあり、その反省も踏まえて、施用量を明らかにしたり、土壌調査を行ったりするなど努力がなされているそうです。
販売
 レインボープランで作られた農産物はレインボープラン推進協議会によって「レインボープラン農産物」として認証され、市内各地で販売されています。また最近では、市内各地に直売所が作られ、農家が「レインボープラン農産物」を持ち寄って販売しているそうです。値段は直売の場合は市場を通さない分だけ安いそうですが、その他の場所だとスーパーのものに比べてやや高めになるそうです。その他、学校給食でも認証米が週3回使われています。


今後の課題
 理念として素晴らしいレインボープランにもいくつかの課題があるようです。
 ・足りないほど堆肥に対する需要がある一方で、申請書や管理簿など認証を受けるための手続きが煩雑なためなかなか利用する農家の数が増えない

 ・農産物の売れ行きが必ずしも順調ではない

 ・コンポストセンターの寿命が15年であるのに対して、すでに7年が経過してしまった


<原てるおの感想>
 今回の視察を通じて、長井市のレインボープランがうまくいっている背景には次の3点があると思いました。まず一つには、行政による上からの押し付けではなく、市民による下からの運動によってレインボープランが実現したこと。二点目には、その運動を力強く引っ張っていく理念あるリーダーが存在したこと。3点目には、ごみ処理が目的ではなく、あくまで良質な堆肥を作ることを目的にプランが出発したことです。
市民運動

 街づくりを考える市民運動の中から生まれてきたのがレインボープランでした。現在でも市民が主体となったレインボープラン推進協議会を中心に運営がなされ、市内外からの視察者に対して独自の市民ガイドを養成して対応しています。市民による自発的な運動がレインボープランを成功に導く大きな原動力になったのは明らかです。
菅野芳秀さん

 レインボープランを支えてきた中心人物の一人である菅野芳秀さんにお会いし、直接にお話を伺うことができました。その話の中で感じたのは、非常に熱意のある人だということです。こうした方が街づくりのために奔走したからこそ、素晴らしいプランが実現できたのではないかと思いました。

 ちなみに、このレインボープランを考えるきっかけを尋ねたところ、「まちが好きだから。生ごみの堆肥化や地産地消はあくまで目的で、この地で生活して幸せだと思えるようにしたい。」とのことでした。

 また、レインボープランがうまく行っているポイントは分別の徹底にあり、その分別の徹底ができたのは、
 ・意識の高さ
 ・目が届くシステム
 ・コミュニティの成立、定住者の多さ
 ・減量化が目的ではなく、ごみは堆肥から食べ物になって自分たちに帰ってくるという考えからスタートしたこと
 ・手応えのある地域の広さ、顔と顔の見える関係
にあるそうです。

 最後に、今後の目標について伺いました。すると、レインボープランのもとになっている「循環」「ともに」「土は生命のみなもと」という考えをさらに地域に広め、学校版レインボープランや商店街版レインボープランを実現して行きたいとのことでした。
土は生命のみなもと

 レインボープランには二つの大きな基本理念があります。まず一つは、土から生まれたものは土に還すという「循環」という考え方。そして、立場が違ってもいつまでも豊な長井であって欲しいと思う気持ちは同じであることから、皆が対等の立場から議論し、決定を分かち合い、実行していくという「ともに」という考え方です。この二つの理念に基づいているからこそ、このレインボープランはうまく行っているのだと思います。


 このレインボープランは素晴らしい事業ですが、これをそのまま藤沢市で行うことは難しいでしょう。やはり市街化地域のすぐ後背に農村部が広がる長井市と市街化地域が圧倒的に多い藤沢市とでは地域的な条件が違うばかりか、菅野さんの指摘する分別を徹底するための条件も整っていません。もしできるとしても、一部の地域でモデル的に行うことができるかどうかではないでしょうか。そして何より、市民運動としての出発とそれを引っ張るリーダーの存在、そして、ごみ減量ではなく、良質の堆肥をつくるという観点からの事業であることが重要です。この素晴らしいシステムを参考に如何に藤沢流のシステムを創り上げていくかが今後の課題になってくると思います。

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